2024.09.24

農研機構では、植物からのDNA抽出実験を体験できるサイエンスカフェを開催し、これまで多くの方々にご参加いただいています!ここでは、参加者の皆様から寄せられた質問をもとに、実験やDNAに関する疑問にお答えしていきます。

質問と回答

  • 回答1.すべての細胞は細胞膜という膜に包まれていて、DNAはその中でさらに核膜という膜に包まれています。また、ブロッコリーなど植物の細胞は、細胞膜の外側に細胞壁という固い壁を持っています。 

    したがって、DNAを取り出すときは、 細胞壁、細胞膜、核膜のすべてを壊さなければなりません。すりつぶす作業では、細胞壁を壊すことはできますが、細胞膜や核膜は完全に壊すことができません。そこで、中性洗剤を加えます。中性洗剤に含まれる界面活性剤という成分は、細胞膜や核膜をバラバラに溶かして、DNAを取り出すことができます。

    こうして膜から出てきたDNAですが、そのままでは見ることができません。ブロッコリーをすりつぶした液はほとんどが水で、DNAが溶けてしまうからです。ところが食塩を加えると、DNAは水に溶けにくい状態になります。そこにそっとアルコールを加えて、液の上にアルコールの層を作ると、DNAはアルコールの層の方へと移動します。アルコールの層に移動すると、水が抜けてDNAどうしが集まり、白いかたまりとして見えるようになります。 

    酸性洗剤やアルカリ性洗剤を使わないのは、この2つには界面活性剤が入っていなかったり、少なかったりするので、DNAを包む膜を溶かしにくいからです。また、アルカリ性にすると、DNAの構造が壊れてしまうこともあります。 

    参考リンク

    DNA抽出実験-DNA抽出の仕組み(動画)

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  • 回答2.ブロッコリーの以外の野菜を使っても、同じ方法でDNAを取り出すことができます。ただし、取り出しやすいものと取り出しにくいものがあります。

    DNAは細胞1つ1つに同じ量ずつ入っています。DNAを取り出しやすいものとは、DNAをたくさん含んでいるもの、つまり同じ重さでも細胞の数が多いものです。

    ブロッコリーの花芽は小さい細胞がたくさん集まっている部分なので、DNAを取り出しやすいのです。一方で、水分が多い果実や、油が多い種子からは、DNAをほとんど取り出せません野菜以外は、肉のレバーなどからもDNAを取り出せます。 

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  • 回答3.1本1本のDNAはとても細いので、普通の光で見る顕微鏡で見ることはできません。DNAを1本ずつ見るには、原子間力顕微鏡などの、特別な顕微鏡が必要です。この特別な顕微鏡を使うと、DNAの形がらせん状であることがわかります。また、DNAには特定の色の光を吸収する物質が含まれていないので、色がついて見えることはありません。取り出したDNAが白く見えるのは、すべての光を反射しているからです。 

    ※原子間力顕微鏡とは、原子と原子の間にはたらく非常に小さい力(原子間力)を検出して、ナノメートル(100万分の1ミリメートル)単位のものを見る顕微鏡です。 

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  • 回答4.教科書などでよく見かけるX字のような形(図の矢印)は、DNAタンパク質に巻き付いて、さらに折りたたまれ束ねられることで作られます。

    DNAがX字の形に折りたたまれるのは、生きている細胞が分裂するときなので、取り出したDNAをX字の形にすることは残念ながらできません。ですが、X字の形になったDNAを顕微鏡で見ることはできます。タマネギなどの種を発芽させ、出てきた根の先を薬品で染めて顕微鏡で見ると、X字の形の染色体を持っている細胞が見つかります(この実験では危ない薬品を使うので、やってみたい人は、学校の先生などやったことのある大人に相談しましょう)。

     

    参考リンク

    体細胞分裂~動物編~(動画)

    体細胞分裂~植物編~(動画)

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  • 回答5.取り出したDNA塩基の並び方を調べることで、そのDNAを持っていた生き物の特徴を知ることができます。これ、病気の診断や犯罪の捜査など様々な分野で活用されています例えば患者さんのだ液や鼻水から取り出したDNA調べる、どんな病原菌が病気を引き起こしているのかがわかります。患者さんがどんな病気になりやすいかを調べて病気の治療や予防に役立てることできます。そのほか、どの植物が病気に強いかや、おいしい実をつけるかなどの情報を集めることで、品種改良にも活用されています。

    参考リンク

    DNA抽出実験-DNAとは?(動画)

    最新バイオテクノロジーを使った品種改良

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  • 回答6.この実験で取り出したDNAを保存したいときは、まず、白いフワフワした部分だけを巻き取るか、スプーンなどですくって取り出してください。それを、エタノールを入れた別の容器に移し替えるか、乾燥させれば保存することができます。乾燥させると、DNAがくっついて取れなくなることがあるので注意してください。 

    しかし、研究などで使うDNAは、塩基配列が壊れないようにしなければならないので、この方法では不十分です。研究などでよく使われる方法では、まず遠心分離機という機械を使って液体の部分を取り除き、DNAだけにします。次にDNAを乾燥させてから、冷やして保存します。DNAは紫外線に当たったり激しくかき混ぜられたりすると壊れてしまうので、光の当たらないところに静かに置いておくことも重要です。また、ガラスの入れ物を使うとDNAがくっついてしまうので、プラスチックの入れ物を使います。 

    ※遠心分離機とは、何種類かのものが混ざった混合物を高速で回転させて、種類別にわける機械です。 

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  • 回答7.細胞の中のDNAは、タンパクに巻き付いて束ねられることで、らまりにくくなっていますまた、DNAは細胞の中で核膜という膜に包まれています。この核膜は、外からの刺激からDNAを守り、ちぎれるのを防いでいます。それでも、放射線が当たったりDNA複製が失敗したりすることで、DNAがちぎれてしまうことがあります。その時は、ちぎれたDNAをくっつけるタンパクが働いて、ちぎれたDNAを直します。さらに、DNAがねじれてしまった時に働くタンパク質もあります。このタンパク質は、ねじれた部分を一度切り離し、ねじれを戻してからくっつけ直すことができます。

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  • 回答8.ウイルスにはDNAのかわりにRNA遺伝物質としているものがいます。しかし、ウイルスは自分の力だけで増えることができないので、ウイルスは生き物ではないと考えている人もいます。そのほかの生き物については、DNAを持たないものは知られておらず、今のところ地球上のすべての生き物がDNAを持つと考えられています。 

    ※生物の定義にはさまざまなものがありますが、①外の世界と膜で区切られている、②体の中で物質を化学変化させる(代謝)、③自分の力で増える(子どもを残す)、の3つが最もよく使われています。ウイルスは、ほかの生き物の細胞を利用しないと増えることができないので、生物ではないと考えられています。 

    参考リンク

    BioKids 第1章 生き物ってナニ?

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