掲載日:2023.5.9

概要

ノースカロライナ州立大学 Genetic Engineering and Society Centerは、遺伝子工学と社会との関わりについての学際的研究および対話プログラムの国際拠点です。自然科学、人文・社会科学などの研究開発や責任ある研究・イノベーション(RRI)という観点から、さまざまなステークホルダーをつなぐための研究やコミュニケーション活動が行われています。

詳細

ノースカロライナ州立大学のGenetic Engineering and Society Center(GESセンター)は、約80名の研究者が所属しており、遺伝子工学と社会との関わりについての学際的研究および対話プログラムの国際拠点です。

遺伝子組換え技術、CRISPR、ジーンドライブなどのバイオテクノロジーに関する自然科学の研究やそれらを対象とする人文・社会科学の研究だけではなく、責任ある研究・イノベーション(RRI)の観点から、さまざまなステークホルダーをつなぐための研究やコミュニケーション活動が行われています。

研究や社会的実践の成果は、GESセンターのウェブサイトに掲載されるだけではなく、学術的な論文として公表されたり、NPR(米国公共ラジオ放送)、BBC(英国放送協会)やニューヨーク・タイムズ・マガジンなど、国際的なメディアにも頻繁に取り上げられています。

ここで、GESセンターの主な活動を紹介します。

2016年、島しょ部の生物多様性を保護するために、外来種であるマウスの根絶を目的としたジーンドライブ使用の可能性が全米アカデミーによって報告されました。このような複数の社会的価値観が競合するテーマに関して、GESセンターにより、①様々なステークホルダーへのインタビューと、②ステークホルダー間の対話ワークショップが行われました。

①様々なステークホルダーへのインタビュー

研究分野、政府機関、NGO団体の方からステークホルダー20人に、ジーンドライブに対する考え、利点とリスク、信頼性のある情報源、コミュニケーション活動などに関する質問が行われました。インタビューでは、「コミュニケーション活動は、フィールド実験の計画前に、地域コミュニティのリーダー・環境活動家・科学者間の十分な対話が必要である」、「目的・計画を全面に押し付けないようなコミュニケーション活動が重要だ」などのコメントがありました。各質問に対する回答は分析・分類され、GES センターのウェブサイトに報告書として公開されています。

②ステークホルダー間の対話ワークショップ

ワークショップは、生物学、外来種、倫理、政策専門家などのステークホルダー18人が参加し、2日間にわたり行われました。

今後の研究・フィールド実験の設計段階における社会的課題に関するフィードバックを集めることに重点を置き、「コミュニティとステークホルダー間の将来的なコミュニケーション活動」や「島しょ部の生物多様性を保護するため、どのような条件の島が適するのか」について議論されました。参加者の多くは、早い段階での地域住民とのコミュニケーション、提供する情報の取捨選択の重要性や実際に存在する島の条件を用いて議論することの有用性についてコメントしていました。

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  • 著者: 山口 富子(国際基督教大学 教養学部 アーツ・サイエンス学科 教授)
  • 編集協力: 石井 花菜(国際基督教大学)/農研機構企画戦略本部新技術対策課