掲載日:2023.5.10

概要

2006年から2年間、西イングランド大学・ブリストル校で、Meet the Gene Machine(注)という、遺伝医学の倫理をテーマとした、演劇と対話を中心とするアウトリーチ活動が12,000人以上の生徒と教員を対象に行われました。参加した生徒からは、倫理的課題について考える良いきっかけとなった、ファシリテーターがいることにより議論がしやすいなどの感想がありました。

(注)Meet the Gene Machineでは遺伝医学の倫理についての知識の習得のほかに、問題を考える力を養う科学教育のあり方も提案している。

詳細

2006年から2年間、西イングランド大学・ブリストル校で、Meet the Gene Machine(MGM)という、遺伝医学の倫理をテーマとした、演劇と対話を中心とするアウトリーチ活動が全英の8つのサイエンス・センターとの協力のもと、12,000人以上の生徒と教員を対象に行われました。

活動後のアンケートでは、参加した生徒から以下のコメントがありました。

  1. 演劇は遺伝学やそれを取り巻く倫理的課題について考える良いきっかけとなった
  2. 対話の場にファシリテーターがいることにより議論がしやすかった
  3. 1、2のことからこの活動は刺激的だった など

演劇と対話を組み合わせた活動は、演者や参加者の知識レベルに幅があったり、運営上の課題があるなど事前準備が難しい側面があります。一方で、トレーニングプログラムや素材提供を通じた、持続可能で革新的な協働学習の重要な手法と捉えられています。さらに演劇は、若者を科学のもつ倫理的・社会的課題に惹きつける効果的な方法であり、サイエンス・センターのコミュニケーターが演技のテクニックを身につけられる利点もあります。

この活動では、科学を含めたあらゆる分野を専門とする教員が演劇や対話を授業に取り入れることができるように、演劇の脚本からロールプレイのシナリオ、講義スライドに至るまで、さまざまな素材がMGMとNational STEM Learning Centreのウェブサイトからダウンロードできるようになっています。また、教員の教育スキルを身につけるワークショップも行われています。


  • 著者: 山口 富子(国際基督教大学 教養学部 アーツ・サイエンス学科 教授)
  • 編集協力: 石井 花菜(国際基督教大学)/農研機構企画戦略本部新技術対策課