アメリカ
【ポイント】
- アメリカでは、ゲノム編集や遺伝子組換えなどを含めたバイオテクノロジー由来(以下、バイテク由来)の植物や動物、食品を、USDA(米国農務省)、EPA(米国環境保護庁)、FDA(米国食品医薬品局)が担当部局となり、管理しています。
- USDAでは、植物の健全性に対するリスクの観点から特定のバイオテクノロジー製品を規制しています。APHIS(動植物検疫局)のAm I Regulated? (AIR)プロセスを通じて、規制対象かどうかを確認することができます。
- FDAでは、バイテク由来の食品・飼料の安全性を所管し、植物と動物では異なる枠組みで管理しています。
【概要】
アメリカでは、ゲノム編集や遺伝子組換えなどのバイオテクノロジー由来(以下、バイテク由来)の植物や動物、食品を、USDA(米国農務省)、EPA(米国環境保護庁)、FDA(米国食品医薬品局)が、植物(環境影響、農薬としての安全性)、動物、食品及び飼料の安全性、の観点からそれぞれの監督権限のもと所管しています。
USDA
USDAによるバイテク規制は、主に植物保護法(PPA)に基づき、APHIS(動物検疫局)を通じて行われています。バイテク由来の植物の輸入、州間移動、環境への放出(栽培など屋外での利用)が、連邦規則7 CFR Part 340によって規制されています。「規制対象品(regulated article)」には、遺伝子工学(GE)によって改変または作出された生物のうち、(1) 植物有害生物に由来する遺伝物質を含むもの、または (2) APHISにより植物有害生物である、もしくは植物有害生物としてのリスクをもたらす可能性があると判断されたものが含まれます。ここでいう「植物有害生物としてのリスク」とは、植物または植物製品に対する傷害、損害、または病害をもたらす可能性を指します[1]。
開発者は、ある生物が「規制対象品」の定義に該当するか否かを確認するために、APHISの Am I Regulated?(AIR)プロセスを通じて照会を行うことができます[2]。APHISが当該生物を規制対象品ではないと判断した場合、その生物は7 CFR Part 340に基づく規制の対象とはなりません。
なお、2020年5月に導入されたSECUREルール(基準を満たしていれば自動的に規制対象外となり安全性審査不要)によってAIRプロセスは廃止されていましたが、2024年12月にカリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所がSECUREルール無効の判決を下したことにより、AIRプロセスが再開されています。
EPA
EPA は、FIFRA(連邦殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法)およびFFDCA(連邦食品・医薬品・化粧品法)のもとで、植物導入保護剤(植物体内で産生する農薬成分やその成分を作り出すために必要な遺伝物質)(Plant-Incorporated Protectants (PIPs))を規制しています。バイオテクノロジーを利用した場合でも、植物体内のPIPsを農薬として利用する場合には、事前登録が義務付けられています。なお、従来の育種技術由来の植物は、FIFRAへの事前登録およびFFDCAに基づく残留基準設定は不要免除となっています[3]。
バイオテクノロジーによって作出されたPIPについては登録等の免除対象とはなっていませんでしたが、2023年5月に公表(同年7月31日施行)された新しい規則では、(1)従来育種でも理論上作り出せる改変や(2)機能喪失型改変によるPIPが適用除外とされました。(1)については適用除外の要件を満たしているかどうかのEPAによる確認が必要です。(2)については開発者が自らのPIPが適用除外基準を満たしていると自己判断すること(この場合、EPAへの通知は必要ですが、EPAによる審査は不要です)も、あるいはEPAに適用除外の要件を満たしているかどうかの確認を求めることも可能です[3,4]。
FDA
FDAは、連邦食品・医薬品・化粧品法(FD&C法)に基づき食品・飼料としての安全性について所管しています。2024年2月、「ゲノム編集技術を用いて作出された植物由来の食品に関する業界向けガイダンス」を発行し、当該食品に対する方針を明確にしました[5]。安全性確保のため、開発者が自主的に事前協議を行うためのプロセスが用意されています。新しい食品の特性によって2つのプロセスがあります。
これらのプロセスは任意であり、FDAも法的に義務付けるわけではありませんが、開発者は安全かつ適法な食品のみを市場に流通させるためにFDAと事前協議を行ってから上市するケースが一般的です。
一方、動物については、ゲノム編集技術や遺伝子組換え技術を用いた動物の遺伝子改変を 「意図的なゲノム改変 Intentional Genomic Alteration(IGA)」 として規制しています。遺伝子組換え動物への規制方針を示した2009年の業界向けガイダンスを改訂し、ゲノム編集技術も対象に含めたガイダンス「動物における遺伝性の意図的なゲノム改変」を2024年5月に発行しました[6,7] 。
リスクに基づいた規制アプローチが取られており、3つのカテゴリーに分類されます。
カテゴリー1は承認申請不要です。カテゴリー2では動物の安全性、食品の安全性、環境への影響などのリスク評価が行われますが、承認申請は不要です。カテゴリー2のIGAはリストが公開されています。カテゴリー3はFD&C法および国家環境製作法(NEPA)に基づき審査が行われ、承認が必要となります。開発段階から相談可能です。
【参考資料】
[1] USDA’s Regulation of Agricultural Biotechnology. (Congress.gov.) (2026)
https://www.congress.gov/crs-product/IF11573
[2] Am I Regulated? (USDA-APHIS)
https://www.aphis.usda.gov/am-i-regulated
[3] EPA Finalizes Rule to Accelerate Use of Plant-Incorporated Biotechnologies to Protect Against Pests. (EPA, Released on May 25, 2023)
https://www.epa.gov/pesticides/epa-finalizes-rule-accelerate-use-plant-incorporated-biotechnologies-protect-against
[4] EPA Posts Resources on Rule to Accelerate Use of Plant-Incorporated Biotechnologies to Protect Against Pests. (EPA, Released on August 4, 2023)
https://www.epa.gov/pesticides/epa-posts-resources-rule-accelerate-use-plant-incorporated-biotechnologies-protect
[5] Guidance for Industry: Foods Derived from Plants Produced Using Genome Editing (2024)
https://www.fda.gov/regulatory-information/search-fda-guidance-documents/guidance-industry-foods-derived-plants-produced-using-genome-editing
[6] Intentional Genomic Alterations (IGAs) in Animals (2025)
https://www.fda.gov/animal-veterinary/biotechnology-products-cvm-animals-and-animal-food/intentional-genomic-alterations-igas-animals
[7] Intentional Genomic Alterations (IGAs) in Animals: Risk-Reviewed IGAs
https://www.fda.gov/animal-veterinary/intentional-genomic-alterations-igas-animals/intentional-genomic-alterations-igas-animals-risk-reviewed-igas
(2026年10月9日更新)
