育種材料と品種の開発

ゲノム編集を利用した野生種の栽培化

【2026年11月2日】

ゲノム編集の新しい利用法として野生種の栽培化という動きがあります。

我々人類は長い歴史の過程で、野生の植物や動物(野生種)の中から、収穫量が多い、おいしい、育てやすいなど人間にとって都合のよい特徴をもつ個体を選び、何世代にもわたって育てることで、野生種とは異なる性質をもった作物や家畜を作り上げてきました(栽培化・家畜化)。
一方で、遺伝的多様性が少なく、野生種が持つ病気や虫に強い、気候の変化に強いといった性質を栽培化・家畜化の過程で失っている場合が多いです。

そこで、野生種がもつ病害虫抵抗性や環境耐性を残したまま、栽培に不都合な形質だけをゲノム編集によって改変して、短期間で植物を「栽培化」できないかということが考えられました。従来は数千年かかった栽培化を数世代で実現しようという試みです。

ここでは、野生型トマト2例、ホオズキ属のマイナー作物であるグラウンドチェリー、野生型4倍体イネの例を紹介します。

1. 野生トマト(Solanum pimpinellifolium)

6つの栽培化関連遺伝子をゲノム編集し、野生トマトを短期間で栽培型へ改良しました。果実サイズは約3倍、果実数は約10倍となり、リコピン含量は栽培トマトを上回りました。

【論文】De novo domestication of wild tomato using genome editing
https://www.nature.com/articles/nbt.4272

2. 複数の野生トマト系統

耐塩性、病害抵抗性、乾燥適応性を持つ野生トマト4系統について、多重ゲノム編集を行いました。栽培化形質を導入しながら、野生種由来のストレス耐性は維持されています。

【論文】Domestication of wild tomato is accelerated by genome editing
https://www.nature.com/articles/nbt.4273

3. グラウンドチェリー(Physalis pruinosa)

ホオズキ属のマイナー作物であるグラウンドチェリーに対し、トマトの栽培化遺伝子に相当するグラウンドチェリーの遺伝子をゲノム編集して、枝分かれを抑制し、果実を大型化し、花数を増加させ、収量を向上させました。

【論文】Rapid improvement of domestication traits in an orphan crop by genome editing
https://www.nature.com/articles/s41477-018-0259-x

4. 野生四倍体イネ(Oryza alta)

野生四倍体イネ Oryza alta をゲノム編集により、脱粒性を低下(種子が落ちにくい)させ、草丈・出穂期を調整し、芒(のぎ)を短縮し、収量性を改善しました。

【論文】A route to de novo domestication of wild allotetraploid rice
https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674%2821%2900013-1


<参考リンク>