【2019年9月3日】
ゲノム編集技術を用いた取組みが進められている品種改良研究の例を以下に紹介します。
食中毒のリスクを低減したジャガイモ
ジャガイモの芽や緑色になった部分には、ソラニンという毒素が作られていて、食中毒の原因になります。近年は、学校等で自家栽培されたものによる食中毒も毎年のように報告されています。ジャガイモがソラニンを合成する時に必要な酵素がわかっています。そこで、ゲノム編集技術でこの遺伝子に突然変異を起こさせて、ソラニンが作られないようにすることで、食中毒のリスクを低減できます。
GABAを多く含むトマト
GABAはアミノ酸の一種であり、リラックス効果や血圧上昇抑制効果の働きがあることが知られています。一般的なトマトにもGABAは含まれていますが、更にこの健康機能性を高めるため、ゲノム編集技術を使ってGABAの生合成に関わる遺伝子に変異を起こさせることで、GABAをさらに高蓄積させるトマトを作出できます。
受粉しなくても実がなるトマト
一般的なトマトでは、実がなるためには花粉がめしべにつく(受粉する)必要があります。ハウス栽培ではハチを使って受粉させますが、夏や冬にハチの活動が低下すると人間による受粉作業が必要になることもあり、手間がかかって大変です。花粉がなくても実がなる(単為結果する)ことに関係する遺伝子に対して、ゲノム編集技術を使って突然変異を起こさせると、単為結果性を持たせることができるようになります。
収量増加を目的としたイネ
農地の有効利用や生産コストの低減のためには、収量の増加が欠かせません。お米の収量を高める品種改良には様々な方向性がありますが、1株当たりの穂の数を増やしたり、米粒を大きくしたりすることも有効です。穂の枝分かれの数や米粒の大きさに関わる遺伝子に対して、ゲノム編集で突然変異を起こさせたイネが開発され、生育や収量にどのような効果があるかを確認する研究が進められています。
- 企画/解説担当者:大島 正弘(農研機構)
- 編集協力者:津田 麻衣(筑波大学)