知的財産の動向

CRISPR/Cas9基本特許を巡る米国での争いが最終フェーズへ

【2021年2月12日】

米国におけるCRISPR/Cas9の基本特許を巡る、カリフォルニア大学とブロード研究所との2回目の特許紛争(インターフェアレンス:106115号)に対して、2020年9月10日に米国特許商標庁の裁定が下されました。

1回目の特許紛争(インターフェアレス106048号)では、真核細胞を対象とするブロード研究所の発明と一分子ガイドRNAを対象とするカリフォルニア大学の発明は、そもそも抵触しないとして終結しましたが、今回、カリフォルニア大学は、争いの対象とする出願を、1回目の特許紛争の対象となった出願から派生した出願群に変更して、再度、特許紛争に持ち込んでいました。これら出願群では、真核細胞を対象とすることに加えて、CRISPR/Cas9がガイドRNAとして一分子ガイドRNAを利用することも請求項に含まれています。

カリフォルニア大学は、派生出願群の請求項に基づき、“真核細胞かつ一分子ガイドRNAを利用するCRISPR/Cas9”の発明概念を対象として両者の発明日の優劣を判断すべきと主張したのに対し、ブロード研究所は、そもそも1回目の特許紛争の蒸し返しになるため再審理は禁じられるべきと主張しました。また、仮に、審理するのであれば、発明日の優劣の判断対象を、一分子ガイドRNAの利用の有無を問わず、“単に真核細胞で利用するCRISPR/Cas9”の発明概念に変更すべきとの主張を行いました。しかしながら、ブロード研究所の主張は、いずれも認められませんでした。

また、両者ともに、発明の優先権が米国出願の基礎となる最初の出願において認められるべきと主張しましたが、ブロード研究所については、その主張が認められた一方、カリフォルニア大学については、2番目の出願における優先権しか認められず、最初の出願に基づく優先権は否定されました。この結果、“出願日を基準とした発明日”は、ブロード研究所(2012年12月12日)がカリフォルニア大学(2013年1月28日)よりも早い日付となりました。

以上の決定を受けて、現在、審理は、両者証拠を出し合って“実際の発明日”を立証する最終フェーズへと移行しています。最終フェーズでは、出願日を基準とした発明日では遅れをとったカリフォルニア大学が、ブロード研究所の最初の出願日よりも早い実際の発明日を立証する義務があり、カリフォルニア大学が、どのような“奥の手”を持っているかが注目されます。

なお、米国特許商標庁から両者に提案されたスケジュールでは、2021年5月7日まで両者からの書面での主張や反論が行われ、その後、いずれか一方、あるいは両方から開催申請が出され、それが認められれば口頭審理が行われる予定です。いよいよ、CRISPR/Cas9の基本特許を巡る米国での争いが佳境を迎えることとなりました。