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  • 2022.03.05

    行政

    CRISPR/Cas9基本特許を巡る争い(カリフォルニア大学 vs ブロード研究所)が米国特許商標庁で決着

    米国におけるCRISPR/Cas9の基本特許を巡る、カリフォルニア大学とブロード研究所との2回目の特許紛争(インターフェアレンス:106115号)に対して、2022年2月28日に米国特許商標庁の審決が下されました。 両者は、一分子ガイドRNAのCRISPR/Cas9系を真核細胞で機能させる発明に関して、その発明日を争っていましたが、2020年9月10日の米国特許商標庁の中間的な裁定では、“出願日を基準とした発明日”は、ブロード研究所(2012年12月12日)がカリフォルニア大学(2013年1月28日)よりも早い日付となると認定され、ブロード研究所が優位な立場を築いていました(関連記事:①CRISPR/Cas9基本特許を巡る米国での争いが最終フェーズへ )。 その後、審理は、両者証拠を出し合って“実際の発明日”を立証する最終段階へと移行していましたが、今回の審決で米国特許商標庁は、実際の発明日においても、ブロード研究所が優位であるとの判断を下しました。 米国における実際の発明日の優位性は、最初に”発明の実施化”を行った者に対して与えられますが、発明の実施化で後れをとった場合でも、“発明の着想”で先行しており、かつ、その後、”実施化に向けた誠実な努力”をしていた場合には、その者に優位性が与えられます。 カリフォルニア大学側は、まず、“発明の実施化”に関して、2012年8月9日までにゼブラフィッシュ胚での実験を行い、30の胚のうちの1つに変異が導入されたことを主張しました(共同出願人であるウィーン大学のレブレ博士の実験)。米国判例上、実用性の確立に試験が必要とされる発明の場合、発明の実施化が認められるためには、その”試験の成功の認識と評価”が必要となりますが、レブレ博士の実験については、証拠として提出された共同研究者間のメールでのやり取りやスライドにおいて、「ヒントは得たが興奮しすぎるべきではない」と記載されていたこと、導入された変異が非特異的である可能性に言及していたこと、(一部のメールについては)別途行ったメダカの実験に対する評価の可能性もあること、などを根拠に、“試験の成功の認識や評価”の存在が認められませんでした。カリフォルニア大学の当初の出願に、このゼブラフィッシュの実験データが含まれていなかったことや、この実験につき何ら刊行されることなくレブレ博士のプロジェクトが終了したことも、実験が成功ではなかったことの判断材料とされました。 また、カリフォルニア大学側は、“発明の着想”に関しては、2012年3月1日までに完全な着想を得ていたと主張しました。米国判例上、完全な着想と言えるためには、“確定的かつ恒常的なアイデア”が発明者の中で形成されていることを要します。カリフォルニア大学側は、完全な着想を得ていた証拠として、一分子ガイドRNAのCRISPR/Cas9系を哺乳動物細胞で機能させる新規アイデアが記載されたジネック博士の実験ノートなどを提出しました。さらに、この着想がその後の実施化まで変化していないことを根拠に、「発明の着想が確定的かつ恒常的である」と主張しました。しかしながら、この着想後のゼブラフィッシュ胚やヒト細胞での度重なる実験の失敗やそれに対する発明者の疑念を示した共同研究者間のメールの存在などを根拠に不確実性があったとして、“確定的かつ恒常的なアイデア”を得ていたとは認められませんでした。 一方、ブロード研究所側は、“発明の実施化”に関して、マウス細胞やヒト細胞において一分子ガイドRNAのCRISPR/Cas9系を機能させた実験が開示された論文のサイエンス誌への投稿を根拠に、2012年10月5日までに発明の実施化を行っていたと主張するとともに、論文のレビュアーのコメントやアクセプトの事実から、“試験の成功の認識と評価”があったと主張しました。このブロード研究所の主張は、米国特許商標庁により認められました。 なお、カリフォルニア大学側は、より遅い日付での発明の実施化の主張も行いましたが、2012年10月5日というブロード研究所側の日付に対して劣位であるため考慮されず、また、ブロード研究所側は、より早い日付での発明の実施化の主張も行いましたが、それら日付は結論に影響を与えないため(2012年10月5日という、より遅い日付で十分であるため)考慮されませんでした。 以上の結果、最終的に、米国特許商標庁は、ブロード研究所側に2012年10月5日までに発明の実施化があったとして発明日の優位性を認定し、対象となったカリフォルニア大学側の発明の特許性を否定しました(旧米国特許法102条(g))。この審決に対して、カリフォルニア大学側は、一定期間内に上訴することが可能です。 ●なお、本審決の評価においては、以下の点に留意する必要があります。 ・今回のインターフェアレンスの対象は、あくまで「一分子ガイドRNA×真核細胞」のCRISPR/Cas9系に関する特許であり、1回目のインターフェアレンスで対象となったカリフォルニア大学の基本特許などは対象とされていません。従って、本審決により、カリフォルニア大学の基本特許群全体の特許性が否定されたわけではありません。 ・米国において、現在、両者は、ツールジェン社とシグマアルドリッチ社のそれぞれとの間でも、CRISPR/Cas9系に関してインターフェアレンスでの争いを行っており、今回の審決をもって、必ずしも、CRISPR/Cas9系の基本発明に関する全体的な解決となるわけではありません。 ・今回のインターフェアレンスは、先発明主義時代に出願された特許に対する米国での紛争(現在、米国は先願主義を採用)であり、日本やその他の国とは、権利範囲やその有効性が異なります(関連記事:②米カリフォルニア大学のゲノム編集に関する2件目の基本特許が日本で成立 、③いちから分かる!バイオと知財の話 【第4回】優先権制度)。 …

  • 2022.03.01

    研究所

    ゲノム編集で無花粉スギを開発
    ~森林バイオ研究センターの研究開発を紹介~

    ●農林水産省では、科学ジャーナリストや科学コミュニケーターの方々に国内のゲノム編集研究施設を取材していただき、ゲノム編集研究開発事例の解説記事を紹介しています。 ▼▼▼ …

  • 2022.02.04

    その他行政

    ゲノム編集魚類の開発に日本オープンイノベーション大賞

    2022年1月28日に内閣府の「第4回 日本オープンイノベーション大賞」の受賞者が発表され、「ゲノム編集技術を用いた品種改良×スマート養殖による地域振興」が、農林水産大臣…

  • 2022.01.28

    その他規制

    中国が、農業利用に限定したゲノム編集植物の安全評価指針(試行)を発表

    2022年1月24日、中華人民共和国農業農村部(日本の農林水産省に該当する部門、以下農業農村部)は、農業利用に限定したゲノム編集植物の安全評価指針(試行)を発表しました。…

  • 2021.12.28

    研究所行政

    ゲノム編集技術により天然毒素を減らしたジャガイモを収穫(2回目・秋作)

    農研機構の圃場(茨城県つくば市)で9月6日に植え付けされた、ゲノム編集技術により天然毒素を減らしたジャガイモ(バレイショ)の収穫作業が12月16日に行われました。 このジ…

  • 2021.12.02

    キッズその他

    「食と農」の子供向け学習サイト「バイオキッズ」を公開

    バイオステーションでは、「食と農」の基本を学べる子供向け学習サイト「バイオキッズ」を、2021年12月1日に全章公開しました。 内容は、小学校の高学年以上を対象とした第1…

  • 2021.11.17

    大学・学会

    糖度が高いトマト品種を作るゲノム編集技術を開発

    2021年11月10日、名古屋大学大学院生命農学研究科の白武勝裕准教授らの研究グループは、神戸大学、筑波大学、理化学研究所との共同研究で、ゲノム編集技術により高糖度のトマ…

  • 2021.10.29

    大学・学会行政

    ゲノム編集により作出された「トラフグ」が厚生労働省と農林水産省に届出・情報提供されました

    2021年10月29日、リージョナルフィッシュ株式会社(京都大学・近畿大学などの共同研究による技術シーズをコアとして設立されたスタートアップ企業)によって、食欲を抑えるホ…

  • 2021.09.29

    大学・学会研究所行政

    ゲノム編集技術により作出された穂発芽しにくいコムギの栽培試験が開始されます

    ゲノム編集技術により作出された穂発芽しにくいコムギの栽培が、農研機構の実験ほ場(茨城県つくば市)で11月より開始されることが公表されました。このコムギは、2021年9月2…

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